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しかしある頃から、彼女の様子が変わっていった。だんだんぼーっとする時間が増え、ついには下を向き、ため息をつく日が多くなった。
――どうしたの?
そう聞いても、ため息ばかり。
お弁当を食べることもなく、本を読むこともなく。ただただ、ため息ばかり。
そんなある日のことだった。少女はいつものようにここへ来て、ため息をついていた。
「ひよりちゃん!」
そう叫ぶ声がして遠くを見ると、一人の少年が駆けてくる。少女はぱっと顔を上げ、すくっと立ち上がった。
しっとりとした黒髪に、日本人らしい茶色い目の少年。少女は、制服のリボンをぎゅうっと握りしめる。
「武藤先輩…!どうして…」
「結花ちゃんに聞いたらね、ここにいるんじゃないかって言われて…。最近部活来ないね、どうしたの?」
「いや、その…」
少女は口ごもる。少年から目をそらし、俯いてしまった。
すると少年はふわっと笑って、
「いや、言いにくいことならいいよ」
と言った。
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