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それから少年は幹の下に腰掛け、少女にも座るように促した。少女が遠慮がちに座ると、2人でお喋りを始めた。
「いつもここにいるの?」
「はい、気持ちいいんです、ここ」
「そうだよね、こんな暑い日は木陰に入りたくなるよね」
「はいっ」
気温は約30度を超えているであろうこの日に、僕を必要としていると思うと嬉しくなった。
少女も、最近では見せなかった表情をしていた。恥ずかしそうにはにかんだり、少年の一言にぱあっと顔を明るくしたり。こんな楽しそうな少女を見るのは、久しぶりだった。
やがて少年だけが立ち上がり、その場を離れた。少女は少年の消えた方を、ぼーっと見つめるばかり。
それからまたしばらくしてチャイムが鳴り、少女は弾かれたように立ち上がった。
「授業遅れちゃうっ!!」
今度は、僕が少女の消えた方をぼーっと見つめていた。
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