凍った星空

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凍った星空

第一話 夕暮れの駅  晩秋の夕暮れ、オレンジ色に染まった景色が、だんだんと青みがかり、それと反比例するように街の灯りが浮かび上がってくる。ふと人恋しくなり、帰るべき場所へ帰りたくなるような気にされる時間帯。  ここは、東京から新幹線で小一時間ほどの所に位置する地方都市の駅。二十五年以上前になるであろうか、筑波で科学万博が開催された頃、ほんの一部の人をのぞいて誰もがこの国の限りない発展を信じて疑わなかった頃、枝を伸ばすように地方へ地方へと拡大していった東京のベッドタウン。そう、新幹線まで利用した、首都圏通勤可能住宅団地末端のタウン。大手メーカーの中堅管理職や研究職、大学教授らをマーケティングの対象に、山を切り開き造成分譲された団地をいくつも周辺に抱える駅。  分譲された当時は、すべてが新しくて活気があった。しかし、今では、それぞれの団地と駅を結ぶバスも、道も、住宅も、寂しげな影を落としている。それどころか、子供たちが学校を卒業し、職を求め各地へ四散した後、退職し高齢化した元サラリーマンの親たちにとって、買い物に不便な山の上の住宅団地は、陸の孤島となりつつある。そういうところを、当時は、明るい未来を信じ、なんの疑いも持たず、競い合うように買い求めた。当時、苗木だった街路樹だけは大きくなり、歳月の経過を物語っている。本当は二十五年前、あのままいけばどうなるか、誰もが予測できた未来。
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