凍った星空

29/120
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
 雅也と瞳、同級生に見つからないよう、いじめを受けている校区内から抜け出し、一緒に手をつないで歩いた隣街の夕暮れアーケード。つないだ手は暖かく、学校のことも、いじめのことも、忘れさせてくれた。 「唇、がさがさしてるね、リップクリーム貸してあげる」 「うん」  瞳は、自分で作った花柄刺繍の入ったポーチからリップクリームを取り出し、雅也に渡した。寒い星空の下で、初めてキスをしてから、だんだんと積極的になってきている瞳だった。着やせするタイプだったので、そう目立たなかったが、間近で見ると思いのほか大きい瞳の胸のふくらみに、この頃の雅也は、ドギマギしたのを、いまでも思い出す。日が落ちた後の駅のホーム、師走の冷たい風、白い蛍光灯、何本もの線路に枕木、増えてゆく街灯り、肩を寄せ合って座った木製のベンチ。この二人が、これからどういう関係になっていくか、もう決まっていた。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!