イカロスの翼

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「マリア、何をしているの」 古びた黒のベールを揺らしながら、姉娘のマルタが家の戸口に姿を現した。 母さんの服を着ると姉さんは何だかおばさんみたい。 (すす)けた家の玄関から、生地のくたびれた喪服を(まと)って歩み寄る姉から、マリアは知らず知らず目を()らしていた。 「お客様がまだいらっしゃるんだから、ご挨拶(あいさつ)なさい」 家内を示して妹に告げながら、十七歳のマルタは少年の姿を認めて怪訝(けげん)な顔をする。 「あなた、ご近所の方?」 ベール越しに問い掛ける薄青の瞳は、氷じみてよそよそしい。 「はい」 少年は慌てて白い羽をポケットにしまうと腰を上げた。 立ち上がると、まだあどけない顔に反して背は高い。 マリアはどきりとする。 もしかして、この子、あたしより、年上なのかな? ずっと自分と同い年くらいに思っていたが、立ち姿を改めて見直すと、少年は十二、三歳に見える。
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