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鶴亀奇譚
ビルが立ち並ぶ街角を、若い男が、とぼとぼと歩いています。
沈みゆく夕陽が街を赤くそめ、冷たい北風が吹き抜けてゆきます。
「今日は一段とさむいなぁ」
コートの襟を立て、とぼとぼと、とぼとぼと歩いていく男。
「あれだけあった金も 残りわずかか。どうにかしないとなぁ」
男が感じている寒さは、どうやら冷たい風のせいだけではなさそうです。
「残りの金も、百万ちょっと。これじゃあと 二三日しかもたないなあ。本当にどうにかしなくっちゃ」
この驚くような金銭感覚の男、名前を『浦 島太郎』といいます。
どこかで聞いたような名前ですね。
これから始まるお話は、浦 島太郎と、島太郎が出会った 一人の女性が体験した、不思議な不思議なお話です。
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