鶴亀奇譚

1/16
前へ
/16ページ
次へ

鶴亀奇譚

   ビルが立ち並ぶ街角を、若い男が、とぼとぼと歩いています。  沈みゆく夕陽が街を赤くそめ、冷たい北風が吹き抜けてゆきます。 「今日は一段とさむいなぁ」  コートの襟を立て、とぼとぼと、とぼとぼと歩いていく男。 「あれだけあった金も 残りわずかか。どうにかしないとなぁ」  男が感じている寒さは、どうやら冷たい風のせいだけではなさそうです。 「残りの金も、百万ちょっと。これじゃあと 二三日しかもたないなあ。本当にどうにかしなくっちゃ」  この驚くような金銭感覚の男、名前を『浦 島太郎』といいます。  どこかで聞いたような名前ですね。  これから始まるお話は、浦 島太郎と、島太郎が出会った 一人の女性が体験した、不思議な不思議なお話です。    
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加