1 道に行く者

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『おやおや、お客さん旅人かね。もうすぐここらは日が暮れる、今夜はここに泊まっちゃいかがかね。』 「……。」 『ここ篠屋はこの街じゃ一番の宿さ、飯良し、風呂良し、文句なし。とお泊まりの方は皆誉めてゆくのさ。見たとこお客さん…あーそうだ、間違いない。大分お疲れのようじゃないか、今夜はゆっくり休んでさ、ね。そうしなよ。』 「…………。」 『だいたい旅人は余裕がないのがダメさ。そんなに急いでどこに行くってんだい?そんなに急ぎの用なのかい? 俺だって、昔は憧れてとっとこ出掛けたこともあったがね。今はダメさ。 余裕がない、路銀は盗まれて…ありゃダメだ。ありゃ、あんときゃ、俺は、夢を見てたんだよなぁ……………夢?旅の夢?ユメ……ゆめのゆめの………のゆめ……。』 「……よ。」 『……は?あ、いや、なんだか、ははっ………で、お泊まりかい?じゃ、荷物をお持ちしますよ。じゃ、その、ちっさい背中の袋をー』 「……て…ねえよ。」 『…は?すいませんね、もすこしおっきな声でしゃべってもらえます?いや、なんだかお客さんの訛りが聞き取りにくく、あ、いや、ゴホンゴホン……』 「勝手に…ヒトのモンに触ってんじゃねーっ!!!」
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