自殺Step1 僕達、今から死にます

2/6
336人が本棚に入れています
本棚に追加
/412ページ
自殺サークル…… それはリアルに悩み、生きる事に疲れた自殺志願者を募ったサークル。 このサークルの主の提案でついに、自殺を決行する日が来た。 「ここか……」 バスを降り、待ち合わせ場所である大きな公園に最初に着いた男。 この男も自殺志願者の一人。 黒いサラッとしたショートヘアーに、綺麗な顔立ちは道行く女性に一度は振り返らせる程の容姿だった。 服装は青のジーンズに、紺のシャツ。 ここまでの説明では、完璧なイケメン男性像を浮かべたと思う。 しかし…… 彼の着ているシャツの胸元と背中には〝亀〟と書かれていた。 簡単に説明すると、まんま悟空愛用の服だ。おそらく、ドンキで購入したものだろう。 そう…… 彼は残念なイケメンだった。 普通の服装をしていれば、女性の温かな視線で釘付けなのだろうが、この服装。彼を見る人々の視線は冷ややかで痛々しいものだった。 そんな痛々しい男は、他の志願者を待つ間、音楽を聞き、それを口ずさみながら暇を潰しているのだが、これがまた痛い。 「会いたかった~会いたかった~会いたかった~ ゲッツ! 会いたかった~会いたかった~会いたかった~ ゲッツ!……坂野~」 AK○の『会いたかった』の替え歌を歌いながら、両人差し指を電柱に向けて、ゲッツ!と決めポーズ 彼には人の視線でダメージを受けるような、繊細な心は持ち合わせていないのだろう。 「これぞ、AK○とダンディ○坂野のコラボ。今は消えてしまった奴のネタをコラボさせる事で、再び復活の火を灯す。問題はPV化した時の奴のポジションだ。サビのゲッツ以外に、奴にはやる事がないという…… これについてどう思うかね?少年」 一人でぶつくさ言いながら考え込む彼は、キャンディーを舐めながら冷ややかな目で見上げる幼子に問い掛けた。 「笑えばいいと思うよ」 幼子のこの一言にフッと笑うと…… 「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」 こうして、公園には彼を残して周りに人は居なくなった。 「えっと……あんたがもしかして、もも……しろじろさんかいな?」 そんなダンディー復活ネタに一人燃えている所を関西弁の男に声をかけられる。 変な服に、遠目で見ても痛いこの男に話し掛けるのには、余程勇気を振り絞ったであろう。
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!