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俺は今、白い箱に閉じ込められて、一見セレブのような、でもどこか囚人のような生活を余儀なくされている。
まだ病床に入るには若いと思うが、振り返ってみれば長い人生だったような気がする。
何も不便はないが、タバコをやめさせられているのが苦痛である。
余命を削るだけの人生なのに、もうこれ以上欲しいものは何もなく煙のように、くゆりくゆりと空に伸びていくだけなのに・・・
ガチャリ
「入るよ。」
病室の扉をゆっくりと開いて入ってきたのは孫だ。
二十歳になったばかりの孫で、娘の面影が色濃く出ていて、妻にも似ている。
しかし、なぜか若き日の自分が重なってしまう。
俺に似て男前だからかもしれないが・・・なんて、またこんな事を言うと妻にたしなまれてしまうな。
「どうしたの、えらく機嫌が良さそうだね。」
孫は優しい笑顔でそう言った。
「いや、良い夢を見てな。今日は良い天気だな。」
俺は窓の外の青く広がる空を見た。
そこには雲一つ無い真っ青な空間が広がっていた。
「散歩連れてったげようか。」
孫はそう言って、ベッドの横の車椅子を組み立てた。
「それもいいな、ここにいても何もないしな。」
俺は孫の言葉に甘えることにした。
孫は優しい。
小さい時から俺になついてくれて、本当に可愛かった。
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