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町工場はすぐ閉まってしまった。
船頭を失った船は進まなくなったのだ。
元々その町工場は爺さんの所有だったから、俺が引き継ぐことになった。
親戚は誰も居なくて、俺は本当に一人ぼっちになったけど、爺さんの残してくれたこの工場で自分を試してみたいと思った。
一人で何処までできるのかを・・・・
そして開いたのが車の整備工場。
車だけじゃなくて、機械ならなんでもござれだ。
本当は車をいじりたかったけど、それだけを専門にしていては稼ぎがなくなってしまうから、生きていけなくなる。
悪あがきってやつだ。
しかしそれも中々楽しい。
家庭用のスチームアイロン、テレビにストーブ果ては携帯ゲーム機だ。
そのどれも違った構造で作り手の心を身近に感じた。
そういえば爺さんがよく言ってた。
「世の中の物すべてには心がこもっている。誰かが人の暮らしをよくしようと夢を込めて作る。だから心が入るんだ。だから物作りはやめられない。」
確かにその通りだと思った。
毎日持ち込まれる機械達に心が踊った。
時間が経つのを忘れて没頭したこともあった。
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