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「はうぅ、やっぱり猫さんは可愛いよね。キュートだよ、きゅ――――――っとだよ! おおきくてパッチリさんのかわいいお目目に、片側三本ずつの愛らしいお髭さんのシャープライン。極めつけはなんと言っても柔らかすぎる猫耳! こりゃあ人間だって頭につけたくなるよね。それに忘れちゃいけないのが肉球。固すぎず柔らかすぎず、ぼくの心を鷲掴みにする最終兵器。キュートすぎるぞ、こいつーっ!」
茶髪のショートボブにどんぐり眼。控え目に言っても小さすぎる身長が、小動物っぽさをよりいっそう際立てる。
登校初日、初会話のお相手は一条【いちじょう】花梨【かりん】。
話しているうちに彼女が俺と同じ学校の、俺と同じ新入生であることが分かった。
「うひゃー、かずくんいいなー。こんなにたくさんお猫様を連れて歩いてるなんて、もうお猫大明神だね、かずくんっ。キュートだよ、べりーきゅーとだよ!」
……そして彼女、一条花梨は、ひらがな英語使用者でした。
登校初日からひらがな英語を常用する人とエンカウントしてしまいました。悪い予感しかしません。
閑話休題。
今花梨の手にはシラタマではない三毛猫が抱かれている。名前はまだ無い、というか知らない。
今俺たちの周りにはシラタマを含め三〇匹を超える数の猫が集まっている。この現象そのものがシラタマの特技である。否、正しくは特性とでも言うべきだろうか。
シラタマは頭【かしら】だ。
シラタマには、ある種のスター性とでも言うべきだろうか、人間でいうリーダーシップとかカリスマ性みたいなものが備わっているようなのだ。
初めての土地であっても、シラタマが歩けば猫が集まり、集団になる。自宅にはたいてい名前も知らない猫がおり、気がつけば違う猫に入れ替わっている。原理は分からないが、シラタマの周りには多くの猫が集まってくる。
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