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鐘が鳴った。
町中の空気を震撼させる荘厳な鐘の音だ。
厳粛なその響きはこの町に来て一週間が経とうとする今でも未だになれない。今は音源が近いからなおさらだ。
――私立聖盾学園【せいじゅんがくえん】。
鐘の音は俺たちが通うこの学園で、退屈な時間の始まりと終わりを告げるチャイムの代わりに使われていた。校庭に行けば、校舎の上で今も揺れる大きな鐘を見ることができるはずだ。今の鐘の音は、時間からして一限目の予鈴だろう。
「それで。一体どういうこと?」
そしてそんな鐘の音が響く中、俺は十数分前に出会った少女に手を引かれて、とある教室に連れてこられていた。
一年Z組。
聖盾学園教室棟の一階に位置する教室。
俺と花梨、そしておそらく目の前の机に腰掛ける男が在籍するクラスだった。
「まあまあ、そんなに焦るんじゃないよ、おちびちゃん」
「『おちび』ゆーな」
花梨が口を尖らせた。
「大体、キミだってこのクラスに入るうえで何のリスクもないだなんて思っていたわけじゃないだろ? むしろそこの彼でよかったと捉えるべきさ。僕はもっと厄介な生徒を押し付けられると思っていたよ」
「それは、確かにそうだよ。……でもっ」
「とりあえずキミが彼を――東雲一騎君を撃たなかったのは賢明な判断だよ」
「えっ?」
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