First part:始業式

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 いきなり名前を呼ばれた。  俺は名乗ってすらいないはずなんだが。 「ははっ、自己紹介が遅れたね。僕は早蕨【さわらび】隼人【はやと】っていうんだ。『早い』『蕨』で『早蕨』、『隼』の『人』で『隼人』。この通り、このクラスに在籍する学生で、キミたちのクラスメートだ。気軽に気楽に、『隼人』って呼んでくれて構わないよ」  そう名乗った男の印象は、変、だった。  花梨と出会った時もなかなか奇妙な第一印象を受けた(最終的には完全に変と断定できた)が、この男――早蕨隼人は花梨を遥かに上回る奇妙さだった。  とにもかくにも、明らかに一〇代の顔ではない。本人に言えば怒るだろうか、三〇台に見られても文句は言えないような顔だった。その上頭に乗っているのが染めるのに失敗したような黒ずんだ金髪なものだから、余計に奇怪な印象を与える。極めつけに上半身はブレザーの中にロックTシャツときた。なぜ数あるTシャツの中で、その気色悪い以外に形容のしようがないキャラクターのTシャツを選んだのか全く理解ができない。指に首に耳に、両手の指では数えきれない数の銀色のアクセサリーたちもその異様な雰囲気をさらに悪化させている。もし同じクラスでなければ三年間お友達になりたくないランキングワースト10に入賞するだろう。 「あ、えっと俺は――」 「ああ、いいよ。二人の名前と簡単なプロフィールくらいは知ってるから。東雲一騎君に一条花梨君だろう? それにその白猫君は、シラタマ、だったかな」  事も無げに隼人は答えた。  ちなみにシラタマは頭の上に戻っている。花梨曰く、連れ込んでも問題ないそうで。 「かずくん、この学園は一クラス五人しかいないから。ほら、見て。黒板に名簿が張ってあるよ」  花梨の指先に視線を向けると、黒板に一枚の用紙が留められていた。格子状に罫線が引かれているのは視認できるが、名前までは確認できなかった。
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