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「そのうち三人は女の子だから、自己紹介をしなくてもかずくんがかずくんだってことは分かるんだよ」
「なるほど。……でもそれだと一条の名前が分かった理由にはならなくないか? ――って、五人!?」
「おお、時間差で驚いたね」
ツッコんだのは花梨。
「えっ、だって五人って……えっ」
いくら少子化が進んでるっていっても一つの教室に五人は少なすぎるだろ、と言おうとしたものの舌が回らない。言葉を発するには冷静さを失いすぎていた。
「ははっ。まーまー一騎、とりあえず落ち着こうか。大丈夫、これからちゃんと説明するから。心配はいらないよ」
馴れ馴れしくファーストネームを呼び捨てで呼ぶ隼人の笑った顔は、やけに子供っぽくて似合わないと思った。
「でも今はちょっと時間がないな。話は移動しながらにしようか」
「えっ、隼人くん。移動ってまさか」
「ああ、おちびちゃんは小さい割に頭の回転が速いね」
「小さくない!」
「ああ、その通り。キミの想像は正しいだろう。上位のクラスはとっくに動きだしてる。キミだって僕だって卒業しなくちゃならないんだ、動けるときに動くのは当然だろ」
「でもかずくんは何も知らないんだよ? それにたった三人じゃ……」
「大丈夫、問題ないよ。全部ちゃんと考えてる。だから、キミ一人で十分に対応できるものにした。心配はいらないよ」
「な、なあっ! さっきから一体何の話をしてるんだよ!?」
ここまで聞いて、ようやく口を開けた。
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