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「ごめん、さっぱりわかんない」
二人は初対面じゃないの? すっごい自然に話してるよね? っていうか俺さっきそこの女の子に拳銃向けられたんだけど? 上履きのない学校なんて初めてなんだけど、これって校風なの? 大体一クラス五人ってどういうこと? これから移動するってどこに? 移動してなにするの? っていうか先生は? ここ学校だよね?
……全部訊きたかった。
でも訊かなかった。訊けなかった。
……窓の外がうるさくて。
「えっ!? ちょ、今度はなに!? ヘリ!? はっ!?」
窓の外にヘリコプターが着陸しようとしていた。窓とほとんど離れていない位置で滞空しているため、凄まじい風音だ。
それにもかかわらず慌てているのは俺の声一つ。風で聞こえてないだけ――なんてことはもちろんない。二人とも澄まし顔で立っている。
「あれ、呼んだの隼人くん?」
「もちろん。訊くまでもないだろう?」
「一応、だよ。他のクラス、って可能性もなくはないでしょ?」
「ははっ、さすがにその可能性は低いでしょ。上位の連中はとっくに動きだしてるし、下位の連中はまだ動かない。こんな中途半端なのは僕らくらいだよ」
「確かに。納得だね」
風音はやかましいのに、不思議と二人の会話は聞こえた。こんな状況で談笑しているのだから敵わない。
そしてヘリは着陸した。
そして二人揃って窓に向って歩き出した。
そして窓に手をかけた。
そしてプロペラは減速した。
そして窓が開かれた。
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