First part:始業式

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「いいかい、一騎。朝から今ここまでの間、そしてこれからも、キミは今までの人生で体験したこともない世界の一端を知るだろう。それにキミが驚くのは当然だし、驚くななんて理不尽を言うつもりはありはしない。でもね、一騎。キミはどうしようもなくこっち側【、、、、】の人間なんだよ。ああ、今は分からなくていい。分かるように話していないんだから当然さ。でも、キミは理解する。分かってもらわなくちゃならない。だから今は黙って付いてきてくれないか?」  制服をなびかせ、驚くほど似合わない学生鞄を担いで、隼人が言う。老けた顔とこれまた驚くほど似合わない少年のような笑顔がなんとも憎たらしかった。 「ぼく個人としてはさ、できることなら、さ。かずくんには付いてきて欲しくない。銃を向けたぼくが言うのもおかしいってキミは思うかもしれないけど、ホントその通りだと思うんだけど、でもキミにはできれば元の生活に戻ってほしいと思っているんだよ。……でもキミがくるって言うなら……――ぼくは止めない。止めないよ」  前を向いたまま――俺を一度も見ないまま、花梨は言う。風で黒いフードは降りていて、茶髪のボブを揺らしながら。
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