First part:始業式

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 * * * 「私立聖盾学園【せいじゅんがくえん】。名の通り、というには少し無理があるか。聖なる盾、なんて大それた名前だけれど、実際やってることはマフィアやヤクザと変わりはしない」  想像していたよりもずっと広いヘリコプターの機内にて、隼人がこの学園の常識【、、】を語る。本人いわくお頭が弱いということで、解説を隼人に任せた花梨は窓際に設置された簡易ベッドでごろごろしている。俺の頭上に乗っていたシラタマも今は彼女の腕に抱かれており、気持ち良さそうに目を閉じている。おっさん顔の話を聞くよりは女子高生に抱かれていたいらしい。 「早速だけどね、一騎。キミはこの国の防衛機関が警察組織だけで事足りていると思うかい? ……そうだな、たとえば今キミが狙撃されそうになっているとする。それを警察だけで食い止められると思うかい?」 「……そもそも、俺が狙撃される、なんて状況がありえないだろ」 「そう言われちゃうと元も子もないんだけどさ。たとえば、だし」  それはそうだが、想像できないものは仕方がない。 「でもね、実際問題として警察組織だけでは対応できない事件ってのはたくさんあるんだよ。狙撃、なんていかにもな感じじゃなくてもさ。スリや空き巣から大量殺人【ジェノサイド】まで、警察だけで対応できないことなんてたくさんあるんだよ」 「よくわからんが……そういうものなのか?」 「仮に、警察が全ての犯罪に対処できるというのなら、この世界で罪を犯した者は例外なく捕まっているはずだ、とは思わないかい?」 「そりゃそうかもしれないけど……」  そうはいってもそれは理想論だ。  他の人間が何を考えていて、次の瞬間何をするかなんて分からないのだから、犯罪を未然に防ぐことは難しいのだし、全ての罪人を捕えることも難しい。 「警察は必ずしも優秀じゃあないからね。もちろんこれは警察として働いている彼らを侮辱しているわけじゃあない。彼らだって懸命に訓練をやり遂げ、自らの仕事に誇りを持っている善き警察官だ。彼らが等しく善良な警察官であることは間違っても否定すべきことじゃない」 「……それで、結局何が言いたいんだ?」
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