First part:始業式

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「ああ、話が逸れてしまったね。――つまりね、上には上がいるってことさ。たとえば全国民の運動能力や学習能力といった才能を機械的に数値化して、上から一〇〇万人を警察官とする、なんてことができればこんな事態にはならないはずなんだ。より有能な人材が警察なのだから、ほかの人々がどんな策を練ろうと、警察に破れない策は作れないはずだから。でも現実はそうじゃない。警察官よりも、身体的にも精神的にも優れた人材は世間にいくらでも転がっているのが実情なんだよ。だから必然的に、警察が解決できない事件だって存在してしまうんだよ」 「……つまり、警察よりも有能な人材はもっといるってことだよな」 「うん、そういうこと」 「でも『数値化』なんて、そんな単純な話じゃないだろ。誰にだって得意な分野があれば苦手な分野がある。確かに警察官よりも有能な人なんていっぱいいるだろうけど、そんなもん何を基準にするかで変わっちまう。仮に数値化したところでそれが意味をなすとは思えないよ」  個人の能力の数値化なんてできるわけがない。人間は学習して成長していくものなのだから、ヒトの能力は数値化できるような固定的なものじゃない。常に変化を続ける流動的なものだ。  それにたとえ人の才能や能力を数値化できたとして、それに何の意味がある? 人間は機械じゃないんだ。個人の能力なんて時と場合で上下するし、数値が高いからといって全ての面で優秀であるはずもない。 「だから、警察組織が全ての事件を解決できないってのは仕方のないことだと思うんだけ――」
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