First part:始業式

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「キミは本当に平均的だね。憎たらしいほどに平均的だ。少数派より多数派だ。天才より凡人だ。主人公より、圧倒的に脇役だ。憎たらしいね。憎たらしくて笑ってしまうよ。少数派になるのが怖いかい? 大多数が居心地いいかい? でもキミは決定的に、絶対的に、運命的に、平均的ではあっても少数派で天才なんだよ。僕たちが変わっていること――少数派であることは看過できるけれども、自分がそうあることは認められないって? そりゃそうだ、それが大多数の考え方だもの。自分と関係ない他者には、より変わっていることを、大多数の中のたった一人になることを、まるでそれが望ましいことであるかのように謳うくせに、自分は決して少数派になろうとはしない。なりたいとは決して思わない。そうだろう? 怖いから。一人ぼっちは怖いから。大多数のぬるま湯に浸かっていたいと思うのが普通だから。――そう、それが大多数の考え方だ。でもキミは違う。キミは大多数の中にはいられない。キミは選ばれてしまった。白羽の矢はキミのもとに立ってしまったんだ。これを拒否することはできない。もしキミが拒否するようなことがあれば、“聖盾【アイギス】”が“聖盾”でなくなってしまう。いいかい、一騎。キミには選択の余地はなく、キミは疑いの余地なく天才なんだよ」  隼人は、本当に、愉快そうに嗤っていた。  花梨が寝転がってシラタマを高い高いしている。今の話が聞こえていないはずなどないのに、彼女は口を挟もうとはしない。  本当に憎たらしいと思っていたのは、俺ではなく、彼らの方だった。 「ははっ。ようこそこちら側へ、東雲一騎。日常はキミが望んだとおり、面白く刺激的なものに変わるだろうさ」  確かに、刺激的なことになるだろう。  でも、その刺激的な日常は俺が望んだ面白おかしいだけの日常なのだろうか?
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