First part:始業式

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 それではこの話自体意味がなくなるというのは道理だ。一方は信用するために本心を見せろと言っているけれど、他方が話したことが本心であることは証明できない。嘘発見器でもなければ解決しようがない。  何か思うところがあるのだろうかと花梨を見やると、彼女はため息を――彼女のイメージに似つかわしい明るく軽いため息を吐いて尋ねた。 「隼人くん、何を言っているのかな?」  花梨は、そっと両目を閉じた。 「それだけで【、、、、、】十分だと言ったつもりなんだけどな、ぼくは。ぼくはキミがどれほどの才能と素質をもってこの学園の生徒に選ばれたのかは知らないけれど、『情報』はキミの得意分野なんでしょ? ……まさか、説明しろだなんて愚は犯さないよね?」 「――ああ、そうか。そんなこともできるんだね。うん、今のは僕の失態だ。謝罪させてもらうよ」 「気にしないよ。それよりもぼくとしてはキミが解ってくれていることが嬉しいよ。クラスメート全員がかずくんみたいな子だったらどうしようかと思っていたけど、隼人くんはやっぱり優秀だね」  ははっ、と軽快に隼人が笑う。
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