First part:始業式

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 二人が一体何を話しているのかよくわからないし、笑われている方としてはあまり面白くない状況だった。 「さて。話が少しずれてしまったね。本題に戻ろうか」  花梨は目を閉じたままだった。シラタマを撫でる右手は動き続けているけど、どうやら目を閉じたまま話を聞くつもりらしい。 「一騎にも分かるように話を進めるから、おちびちゃんは聞きたくない話もあるかもしれないけれど、その辺は了承してくれ」 「わかった。でも、おちびじゃないやい」 「さて。まず最初に言った通り、僕と彼女が出会ったのは今日が初めてだ。でも僕らには共通の目的があった。あるだろうと思われた。それゆえに僕らは人見知りせずに話し出すことことができた、っていうわけだけど。ここまではいいね?」 「ああ。でもなんで共通の目的を持っているって分かるんだ? 二人とも初対面だったはずだろ」 「そうだ、一騎は当然そう思うよね。だからまずこの学園の制度についてもう少し話さなきゃならない」  シラタマがにゃあと叫んだ。花梨の指が鼻に当たったらしい。ごめんごめん、と花梨が割と必死に謝っている。目を閉じているからそういうことになるんだ。 「さっき一騎が言ったこと。才能の数値化は絶対ではない――これは政府も認めている。この誤差は人間である限り、感情を持つ限り、取り除くことはできないものだからね。それでもこの学園が成立している理由は、さっき話した通り才能のレベルが高い人間の方が“聖盾”としてより有用になる可能性が高いから。でもかといって、キミの言うように数値的凡人が数値的天才を凌駕する可能性を否定できるわけじゃない。この学校に集められた一年生一三〇人であればそれはなおさらだ。ある特定の状況下において、第一三〇位の者が第一位の者を打ち負かす可能性はそれほど低くない。――さて、さっき僕はこの学園のことを、“聖盾を育成する機関”と言ったね。この言葉は正しい。ただ間違ってほしくないのは、この学園の生徒が必ずしも“聖盾”になれるとは限らないということだ」
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