First part:始業式

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「え、そうなのか?」  俺の疑問に間髪入れずに花梨が答える。 「うん。この学園で卒業できるのは毎年五〇人だけだよ」 「五〇人!?」  えっと、確か一年生は五人×二六クラスで一三〇人だから、五〇人っていうと…… 「一三分の五。百分率に直すなら、三八,五パーセントってところかな」  進級試験や卒業試験よりも入学試験を重視する日本の学校では、この卒業率は異常といっても過言ではない。 「この学園の入学基準は、全国の中学三年生の才能を数値化した上位一三〇人というのは教えたね。でもさっきから言っている通り、この一三〇人全員が必ずしも数値通りの能力しか発揮できないとは限らないし、また期待通りの能力を発揮できるとも限らない。だからこの学園で過ごす三年間で、僕たちはさらに選別されるんだ。まず入学時、僕たちは基本的に数値の高い順にA組、B組、C組、と五人ずつ割り振られる。つまり僕たちZ組は最底辺のクラスというわけだ」  ははっと隼人が笑う。  なるほど。花梨が朝言っていた『上位のクラス』というのはこのことか。 「そして一年間、各クラスの生徒たちは進級するために『単位』を集める。もちろんここは聖盾学園だからね、単位と言っても勉強しろとか、テストで赤点をとるな、とかそういうことじゃない。僕たちに求められている才能はそんな枠で捉えられるようなものじゃない。内容はまあいろいろあるんだけど、僕らはそれらを一括して『単位』と呼んで、その単位の回収のことを『授業』って呼んでるわけさ」 「『授業』、ね」 「学生だからね、言い得て妙だろ? ――そして単位を無事に集めた者だけが進級できるというわけだ」 「……ん? それじゃあ授業と単位の内容が違うだけで、他の学校と変わらなくないか? 進級に必要な単位の数が決まっているなら、卒業生がそこまで少ないのは妙な気がするんだけど」
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