First part:始業式

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 隼人の説明通りだと、一般的な単位制の学校との差がない。そのうえで卒業生少ないとなると単位取得の難易度が極端に高いのだろうか? 「あー、そうじゃないんだ、一騎。進級に必要な単位数が決まってるわけじゃなくて、取得した単位数の上位一六クラスまでが、二年生に進級できるんだ」 「この一六クラスっていうのはね、Aクラス――特待生を除く五分の三が進級できるっていうことだね」  目を閉じたまま花梨が補足を加える。 「そして三年への進級時はさらに五分の三に絞られる。最終的には、B組以下二五クラスのうち九クラスと特待生のAクラスが三年に進級でき、彼ら全員が卒業資格を得る。よって卒業生は最大で五〇名ってことなのさ」 「なるほど……――いや、ちょっと待ってくれ。単位が進級の基準になってるって言うのは分かったけど、五分の三のクラス【、、、】が進級って――」 「そう、その通り。単位はクラスごとに集めなければならないんだ。個人ではなく、ね」  なるほど。  一般の学校と同じなのは進級に単位が必要ってところまでで、進級の基準になる単位が決められているわけじゃないってことだ。そしてなおかつ、クラスごとに単位を奪いあわなければならない。 「いや、でもなんでクラス単位での奪い合いなんだ? この学園の目的は優れた“聖盾【アイギス】”の輩出だろ。それならクラスごとに行動させるよりも、個人の能力を判定すべきなんじゃないのか?」  仮にとても優秀なクラスがあったとして、進学に十分な単位を取得できたとする。そのとき五人のうち一人だけの能力が大幅に劣っていても、その一人は進級できることになってしまう。それではより優秀な“聖盾”を選抜したとは言えないだろう。 「否定はできないね。確かにクラス単位での進級判断は、劣等生を進級させたり、あるいは優等生を落第させたりしてしまう可能性を孕んでいる」 「だったら……」 「でもそれ以上に、団体行動をさせることにはメリットがある」 「メリット?」
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