First part:始業式

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 血縁と言われてもピンとくるものは相変わらず何もない。両親はいないし、妹は中学生だし、従姉はバカだし。そのまま口に出すと、隼人は笑いながら肯定した。 「ははっ、確かにバカかもしれない。でもキミは、キミの保護者――東雲美羽【しののめみう】が一体どんな人か、キミは知ってるのかい?」 「美羽姉?」  この話題に美羽の名前が出てくる意味が理解できなかった。 「美羽姉は従姉だから、そりゃ確かに血縁だけど……アレは今世紀最大のバカだぜ? 馬鹿と天才は紙一重だなんていうけど、美羽姉は確実にバカの側だ」 「噂はかねがね。相当な奇人らしいね」  反論が返ってくるかと思ったが、隼人は同意を示した。 「ただ、こうも言うだろ? 天才は凡人には理解されない」 「俺たちもその天才だったんじゃないのよ」 「僕らですら及ばない、ということさ」  とにもかくにも、と隼人が言葉を続ける。 「一騎は彼女――東雲美羽が今どこにいて、何をして、どんな仕事に就いているか、キミはどこまで知っているんだい?」  美羽の名前が出てくる必要性が未だに分からないが、隼人を信じて質問に答える。 「……そうだな。ほとんど知らない、いや全く知らないって言ってもいいくらいだな。たまに思い出したみたいに電話が掛かってくるだけで、こっちから掛けてもほとんど出ないし。世界中を飛び回るような仕事だとは聞いてるけど、それ以上のことは俺も妹も知らない」
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