First part:始業式

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 確かに俺たち兄妹は美羽のことをほとんど何も知らない。でもそれは俺たちが分かっていて見逃し続けていたことだ。 必要があれば美羽は俺たちに教えてくれる。教えていないということは教える必要がないからだ。俺たちはそう信じて今まで過ごしてきた。 「そうか。……多分この話はね、単に一騎たちが納得しないから話さなかったってわけじゃないとは思う。東雲美羽には彼女なりの考えがあってキミたちにこの事実を隠していたんだと思う。でも、それはこれまでの話だ。僕は、今のキミは知っておくべきだと思うし、どちらにせよこの学園に入学したからには遅かれ早かれ知ることになると思う。だから東雲美羽には悪いけれど、僕は口を割らせてもらう」  ここまで、隼人の言葉の半分も理解できなかった。  でも次の一言で、全部理解した。 「――東雲美羽。彼女は優秀な“聖盾【アイギス】”だ」 「………………え?」  なっ。  美羽が、“聖盾”……? 「そうだ。東雲美羽は実に優秀な“聖盾”だよ」 「――い、や。いや。いやいやいやっ! 確かに今までの話だってとんでもない話だったけれども、トンデモ話だったけれども! さすがにそれはないだろ。才能の数値化って奴が何を基準にしてるのかは知らないけど……だってあいつすっごいバカなんだぞ? 一条もびっくりするくらいバカなんだぞ?」 「今ぼく、そこはかとなく馬鹿にされたのかな」  馬鹿にしたかどうかはともかく、美羽が“聖盾”だという話は、たとえ隼人の言う話でも信じられなかった。
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