First part:始業式

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「ははっ、怖いもの知らずだねえ。まあ、さっきも言ったけど、彼女のお頭がちょっと弱いのは僕らも承知しているよ。でもね、僕の言ったこともまた紛れもない真実で、彼女は確かに優秀な“聖盾”だってことを理解してほしい。……具体的に話すとだ、さっき言った狙撃の話じゃないが、彼女が属するチームは護衛活動のエキスパートなんだよ」 「……えっと、いわゆるSPみたいなやつか?」 「ああ、そんな感じ。イメージとしては大体あってるかな。ただ、一騎が想像していることよりももうちょっと激しかったりするかもだけど。……まあ、ここで僕がいくら言葉を重ねても、キミが納得するには不十分かな。それが自然な反応さ、構わないよ。いつか東雲美羽と会える機会にでも、本人に聞いてみるといいよ。今のキミにならきっと話してくれるだろうさ」 「……ああ、そうする」  正直、信じられない。  でも同時に隼人がここまで言うことが嘘や冗談だとも思えなかった。  とにかく、今は置いておこう。本題は美羽の話ではない。 「そして、この話が真実だとすれば、さっきの話の辻褄があわないか? 才能とか能力は子供に伝播するっていうだろ? つまりそういうことだよ。一騎、キミはキミ自身の能力ゆえに選ばれたというよりも、優秀な“聖盾”である東雲美羽の才能を受け継いでいることを期待されて、この学園に入れたんじゃないかと僕は考えているんだ」  ――血縁。  なるほど確かに、美羽が優秀な“聖盾”であるというのなら血縁の話も真実味を帯びてくる。 「いや、まてよ。それだとやっぱりおかしい」  引っかかりを感じて口にする。 「美羽姉が仮に“聖盾”だったとして、その血縁者である俺に何らかの能力やら才能やらが受け継がれているとしても、他の“聖盾”にだって血縁者は、それこそ兄弟や両親、子供がいるはずだろ? 俺が選ばれて他の血縁者が選ばれない理由がないじゃないか」
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