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「見ての通り、あのトラックは銀行強盗の車だ」
「強盗? こんな朝っぱらからかよ」
「まだ九時半を過ぎたところだもんねー。それにこの銀行、開くの一一時からって書いてあるよ。開店まで待てとは言わないけど、まだこの時間じゃ誰もいないよね。せめて職員が来てからの方が、人質取れてうまくいくもんじゃないの?」
「武力行使でATMも金庫も、ついでに場を収めに来た警察も、みんな壊してしまおうって寸法なのかな。あまり頭のいいやり方とは思えないけれど、それを考えるのは今回の僕らの仕事じゃないからね。相手がバカなのは幸運だと思っておこう」
「……一応確認するけど、あれを解決するのが今日の授業ってことでいいんだよね?」
花梨が後ろ半分だけしか見えないトラックを指差す。
「え、授業?」
俺一人が驚きの声を上げた。
「当り前だろう、一騎。キミは一体何しに来たんだよ」
あまりにも隼人が当然であるかのように答えるので、一瞬自分が間違っているかのように思ってしまった。
「……いや、何をするか分からないから付いてきたんだけど」
「ああ、そう言えばそうだったね」
つい忘れてしまうね、と笑って隼人は続ける。
「さっきはぼかしたんだけど、僕らの授業はね、こういう事件を解決することなのさ」
「こういう……って、こういう?」
半壊した銀行を指差して尋ねると、二人は頷いた。
「いやいや、二人とも、おかしいだろ。銀行強盗だぞ? スリとかならまだしも――いや、スリが相手でも十分危険なんだけど。ほら、隼人もさっき言ってたじゃんか。武力行使してくるって。ATM壊すって……銃とか使うってことだろ? 学生がどうにかできる相手じゃないだろ」
「かずくんもなかなか慣れないねえ」
「慣れるわけないだろ!」
肩を竦める花梨にツッコむ。
こちとら銃を見たのも、向けられたたのも今日が初めてだっていうのに。
「一騎。授業はね、こういう警察が対応しきれない事件を解決することなんだよ」
「解決ったって……俺たちはただの子供で――」
「ただの子供、じゃあないよ。あくまで、天才だ」
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