First part:始業式

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 花梨の言葉に激しく同意。  俺たちがいくら天才だと言われても、銀行強盗をどうにかできるとは思えない。 「おちびちゃんの言うとおりだね。まあ、僕だってやろうと思えば一騎よりもずっと動けるけれど、やっぱりそれは僕がやるべきじゃないよね。僕は裏方専門だもの。……だから、はい」  そうして隼人は、持ってきていた鞄から、およそ学生が持ち歩くべきでないものを取り出した。  それは銀色に煌めき、春の柔らかな日差しを鋭く反射する。  色は違えど、一刻ほどまえに突きつけられたモノと本質は変わらない。  人が創り出してしまった冷たい兵器。 「即効性の麻酔銃だよ。麻酔弾は用意してないだろ?」  隼人が言った。  そのグリップを――花梨に向けて。 「――――――え?」  まさかと思った。  思考が止まってしまった。  俺を置いて、二人の会話は続けられた。 「今日の授業に殺害許可は下りていない。獲得できる単位は少なくないけれど、現状では彼らはまだ死罪になるほどの罪は犯していない。まあ、逆に言えば殺さなくて十分な程度の相手だから。彼らの作戦を見れば一目瞭然なように、相手の先輩はあまり狡猾なタイプではないみたいだからね。弾はそれで足りるかい? 相手は無能な豚共だといっても、仮にも武力行使を実行しているんだ、それなりの武装はしているだろう。場合によっては長期戦になるかもしれない。予備のマガジンも持って行くかい?」 「……やっぱり、ぼくが行くんだね」  隼人の質問に答えず、花梨は応えた。
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