First part:始業式

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「それじゃ、起動するよ」  隼人の声から三秒、ディスプレイに画像が映し出された。  散らばったガラス。  歩道に乗り上げ、銀行に突っ込んだ、前半分が見えない大型トラック。  映された画像は、目の前の銀行そのものだった。 「……この場所の画像、か?」 「残念、不正解だ。まあ、見ていてごらん」  隼人が手元で何かを動かす。ラジコンのコントローラーのような送信機。そして同時に、ディスプレイに変化が見られた。  画像が少しずつ上に移動していく。続いて下、左右、前後……。  これは―― 「リアルタイムの動画か!」 「ご明察」  ニヤッと笑って隼人が言葉を付け足す。 「遠隔操作可能の動画撮影装置。要はリモコン操作できるのビデオカメラさ。この距離なら、無線通信でもタイムラグはほとんどない。その上撮影ユニットは直径一センチ程度の飛行物体。僕の専門は情報だけど、機械いじりも好みでね。音声伝達ができないのが玉に瑕なんだが、即興だけど、自信作だよ」
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