First part:始業式

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 とてもじゃないが即興だなんて言葉は似つかわしくない。  ディスプレイに映る映像は恐ろしく鮮明で、ドットの区別などつかない。自宅のテレビよりも綺麗かもしれない。隼人の言うように、タイムラグもほとんどないようだ。  俺だって機械に強いわけではないが、隼人の技術が破格なのは分かる。  ――これが、“聖盾”。  その候補生にしか過ぎない学園生で、その上専門でない分野にもかかわらずこの実力。  改めて、自分がここに立っている理由が分からなくなった。 「それじゃあ、進もうか」  言うが早いか、カメラが歩く程度の早さで前進する。  見えない瞳はゆっくりと割れたガラスの中へと突き進んでいった。  謀ってか謀らずか、銃声は止んでいる。 「さあ、一騎。その目を見開くんだ。これこそがキミが生き抜かなければならない世界だ。これがこの学園での授業だ」  室内は思いの外綺麗だった。  銃撃戦の後、と言うから粉塵舞う真っ白な空間を想像していたのだが、残念ながら、いや幸運にも、室内は普段目にする銀行とそれほど差はなかった。
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