Prologue:捨て猫

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「これ、名前だよな、多分」 「うん、私もそう思う」  美羽自作のネームプレートだろう。……名前以外の情報が一切書かれていないところが何とも美羽らしい。 「とにかくこの白猫(みぞれ)さんを起こそう。美羽姉から何か聞いてるかもしれない」  普通にみぞれさんって呼ぼうよ、といいつつ白猫(みぞれ)を起こす香奈。  っていうか、さっきから結構がやがややってるのに、全然起きる気配がないな、この猫(人)。 「みーぞーれーさーん!! 起ーきーて、くーだーさーい。ごーはーん、でーすーよーっ!!」 「………………ふがッ」  あ、ご飯に反応した。美人から出てはいけないような音がしたが、聞かなかったことにした。 「よし、香奈。飯だ、飯で釣れ」 「よしきた、がってんっ! みぞれさーん、朝ご飯食べちゃいますよー、いいんですかー? 私とお兄ちゃんで全部食べちゃいますよー?」 「時間的には昼飯なんだが……」 「あー、うー。ごーはーんー……っう」  白猫(みぞれ)は添い寝をしていたシラタマを抱きかかえ、唸る。  何を言っているのか分からない。――が、起きかけているのは確かだ。 「香奈、もうひと押しだ」  なんだか楽しくなってきている様子の妹をけしかける。 「それじゃああと一〇秒だけ待ってあげましょう。一〇、九、八、――〇。じゃあ、お兄ちゃんお兄ちゃん、食べてしまいましょう、はい、いただきま――」 「いただきますっ!」  起きた。  ハキハキした声だ。 「おはよう」 「はい、おはようございます」  兄妹も一応返答する。  白猫(みぞれ)をよくよく見てみるとよだれが顎の下まで垂れている。綺麗な顔が台無しだった。 「……はれ? 朝ご飯は?」    俺は白猫と出会ってしまった。  そして、一人になりたい【、、、、、、、】と、思うようになった。
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