First part:始業式

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 仰向けのシラタマの寝顔を見ていると気持ちが落ち着く。  この物語の主人公は東雲美羽。  みぞれはどこかの国のお姫様で、俺と香奈はみぞれを守る付き人で。  美羽が主人公らしく奔走している間に、みぞれが狙われて大ピンチ。  俺たちは脇役らしく頑張って、脇役らしく負けてしまって。  ここまでか、ってところで主人公がやってくる。  そんなお話だったら面白いな、なんて思っていた。  ――パタン。  浴室の方から扉を閉める音。  みぞれが出たのだろうか。随分と早いな。 ――ドタンッ。  ……ドアを閉めた、とかそんな音ではなく、何かがか壁に激突したような、明らかに不吉な音がした。 『うぅ……。かずきぃー』  なんか、リビングのドアの向こうから情けない声がした。  それは確かに助けてやりたくなるような声ではあるのだが……あまりいい予感がしない。 『うぅ~……、かぁーずぅーきぃーっ!』  なんかもう、今にも泣きだしそうだった。 「まったく、何だって――………………お前、何してんだよ」  誘惑に逆らえず、ドアを開けてしまった俺を待っていたものは、水浸しの廊下と泡だらけの壁紙、それから頭を抱えてしゃがみ込むバスタオル姿のみぞれだった。 「だって……。目に、入ってぇ、ぐす。ぐしゃってね、なってね、壁があって、ドカッてなって――」 「あー、もういいから。とりあえず泣き止め」  怒る前に呆れてしまう。  泣きそう、というかもう泣いていた。  みぞれの名誉のために補足しておくと、涙の原因は頭から垂れる泡ではなく、壁にぶつけた頭の方だろう。これで名誉が守れたかは怪しいが。
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