Second part:罪

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「えー、それで諦めてきちゃったの? ダメダメじゃん、かずくん」  翌朝、四月六日の教室。  事のあらましを聞いた花梨が非難の声を上げた。  理由は簡単で、この教室にいるべき四人目のクラスメート――葛城【かつらぎ】みぞれが今日もまた登校していないからだ。  昨日の強盗事件を解決した後、俺は隼人からみぞれを教室に連れてくるように頼まれた。“聖盾【アイギス】”になるため、単位を集めなければならない俺たちにとって、ただでさえ少ない人員が欠けることは死活問題なのだから隼人の要求はもっともなのだが、残念ながら今日もみぞれは登校していない。花梨の非難も道理というものだ。 「諦めたわけじゃない。あいつが来たいって言えばいつでも連れてくるさ。俺はそもそも、あいつを無理やり連れてくるつもりなんてさらさらない」  椅子に腰かける俺と机を挟んで向かい合う形で後ろ向きに椅子に座る彼女は、今日も真っ黒なパーカーを着て元気が有り余っている様子。ちなみにパーカーは昨日のものとは別物のようだ。  現在時刻はほとんど意味のない始業の鐘から一〇分ほど経って八時四〇分を回っているが、隼人の姿はまだ見えない。 「ふーん。まあ、ぼくはどっちでもいいんだけどね」  非難の言葉に反して、口調から怒りは感じられなかった。 「怒らない……のか?」 「ん? ぼくが? あはっ、そうだねえ。かずくんの頭の上のお猫様を貰えるなら」  シラタマに呼んでもらった一〇匹とともに、頭上のシラタマをくれてやる。 「うはっ、かずくん太っ腹だね」  フードの中に隠れているにもかかわらず、瞳が爛々と煌めいているのが分かる。これで花梨が怒ることはまずないだろう。 「だけどさ、一条。一人欠ければそれだけ単位を集めるのは難しいだろ。卒業を――“聖盾”を目指すなら、人手は多いほうがいいんじゃないのか? お前は……この学園を潰すんだろ?」 「そりゃあ、多いに越したことはないよ」  当然、と猫とじゃれる手は休ませずに言った。ちなみにシラタマは現在花梨の頭上で丸くなっていて、机の上で花梨に弄ばれているのは毛並みのよいアメリカン・ショートヘアだ。
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