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「昨日かずくんに会った時はそりゃ動揺しちゃったけど、ぼくはそもそも、一人でも“聖盾”になるつもりだったからね。仲間なんて期待はしていなかったんだよ。……まあ、さすがに全く何も知らずにこの学園に入学する人がいるなんて思いもしなかったから驚いたけどね。でもね、びっくりはしたけど、隼人くんもかずくんも一緒に単位を集めてくれるんでしょ? ぼくが想像していた最低の未来より、今はずっと幸運だよ」
「隼人はいいとして、お前のその学園取り壊し組に俺も入ってるんだな」
「えー、かずくんは手伝ってくれないの?」
「そんな顔で見るなよ」
女の子らしさのかけらもないパーカーを着てるとはいえ、そのどんぐり眼で上目づかいに見つめられたら、俺に拒否権なんてなくなっちまう。
「別に、俺だって一条たちと敵対しようだなんて思っちゃいないけどさ。俺はただ、この学園がそうまでして壊さなきゃいけないモノだとは思えないんだよな」
まだ登校二日目だからかもしれないけど、と付け足す。
「……うん、そうかもしれないね」
思いの外、花梨は首肯した。
「……へえ、意外だな。もっとはっきり否定するもんだと思ったよ」
「そう言いたいところなんだけどね。ぼくとかずくんじゃ知ってる情報の量が違うからさ、かずくんがそう思うのも分からなくはないんだよね」
退屈そうに欠伸を噛みしめているのに、猫とじゃれている指先だけは楽しそうに飛び跳ねている。
「“聖盾”っていう制度はさ、普通に考えれば理想なんだよね。才能の数値化を倫理的な側面から否定する人もいるかもしれないけどさ、こんなのは一般の学校の入学試験と同じだと思うし。判断材料が筆記試験【ペーパーテスト】の点数から才能の数値になったってだけで、自分の能力を示す、って点では変わらないものね」
「ああ、なるほど。勉強も一つの才能だもんな」
「そうそう。実際勉強の良し悪しも、聖盾学園の入学の審査対象になるしね。ぼくなんかはもちろん違う部門だけどね。一般の学校で言うところのスポーツ推薦とか、多分そういう感じ」
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