Second part:罪

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「そ。半分。ぼくも専門じゃないから断言はできないけど、確かにかずくんの言うとおり、ぼくや隼人くんがこの学園を壊したい理由が分からない生徒――つまり学園が正しい機関だと思っている生徒は少なからずいると思う。なにもかずくんみたいになんにも知らないわけじゃなくてもさ、隼人くんみたく情報収集の能力がないとそもそも疑ってみようだなんてまず思わないだろうしね」 「でもそれだけじゃない、か」 「うん。逆に、ぼくらが学園を潰そうとする理由を知って、その上で学園に賛同してる人もいる。――少なくとも、この学園を卒業した人たちは、きっとみんな知ってると思う」 「それでも学園に――この“聖盾”という制度に反対はしていない、か」 「うん」  不意に花梨が立ち上がる。  アメリカン・ショートヘアは机に残したまま、数匹の猫がゆっくりと歩き出す彼女の後をついていく。 「“聖盾”には莫大な富が与えられる。昨日隼人くんは、溢れんばかりの、なんて言い方をしてたかな。“聖盾”に任される仕事は、危険な仕事や、普通の人じゃできないような仕事ばかりでさ、その莫大な報酬は当然与えられるべきなんだと思う。でも、“聖盾”がなくなればその報酬はなくなる。この制度がなくなったら、聖盾学園の生徒も普通の学生に、“聖盾”だったひとなんて無職になっちゃうかも……だしね」 「そりゃ、確かに怖いな」  俺は本来通う予定だった学校に戻されたとしても、全然勉強についていけねーや、って笑って済ませられる。でも“聖盾”は実質解雇されるようなものだし、苦しいだろう。 「みんなさ、自分が可愛いんだよ。知ってても、この制度を壊す気にはならない。悪だと分かっていても、正義になろうとはしない。当然だよね。だって自分もその恩恵を受けてるから。“聖盾”にだって彼ら自身の人生があるもんね。“聖盾”にも大切なものがあるから……」  花梨は言った。
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