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―それからしばらく経ったある日。
満里奈は、その日もいつものように、二組で奈緒子とおしゃべりをしていた。
想像してもらえれば分かると思うが、当時の教室は、机が4列位に並べられていて、
それぞれの間には、人が1人通れるくらいの通路があった。
満里奈は、その通路を遮るようにして、奈緒子と話していた。
「でさ~、昨日のテレビでね…」
満里奈が話に夢中になっていると、
「ちょっとごめんね~」
その声と同時に、満里奈の肩にフワッと両手が乗った。
「…っ!」
満里奈は一瞬ドキッとして振り返ると、声の主は春希。
「ちょっと通るね」
「あ、…ごめん」
満里奈が通路をあけると、春希はニコッと微笑んで通り過ぎた。
満里奈は、奈緒子には悟られないように、平静を装っていたが、何故かドキドキが止まらなかった。
両肩に乗せた春希の手が、あまりにも優し過ぎて…
まるで、壊れ物を扱うかのように。
男性に触れられる事なんて、慣れていたはずなのに、なぜか心臓が暴れる。
"ビックリしただけだし…"
何に言い訳しているのかわからないが…。
満里奈は、自分の動揺にそんな理由をつけて、気づかないフリをしていた。
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