└1 神話を背負う少女

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「む……」   いつの間にか、手元のティーカップが空になっていたので、私はテーブルの真ん中にあるケトルに手を伸ばします。今飲んでいたのとはまた違う、手の付けていなかった方の紅茶です。  とくとく。  この擬音を最初に使用した人を、私はおそらく尊敬できます。  紅茶が程よくカップに注がれたところで、ケトルを元の場所に戻し、二度目のいただきます。まずは味を確かめる為にカップをゆっくりと傾けます。 「ん……美味しい」  満点でした。  丁度いい酸味と、後を引かない甘さ。砂糖を入れないでも嗜める、秀逸な一品です。 「アル、この紅茶はどこの茶葉を使用しているのです?」  ティータイムは乙女にとっての生命源。高級なものでなければ自宅でも嗜めるかもと思い、アルに問い掛けます。因みに、アルはここの責任者的な役割を任されており、紅茶には人一倍うるさいのでした。まあ、うるさいとは言っても、口数はやっぱり少ないのですけれども。
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