└0 たった一つの致命傷

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 どれだけの時間をそうしていたでしょうか。あるいはほんの刹那だったのかもしれません。そこにきて、リーダー格が何かを閃いたように、唐突に動き出したのです。  得物が再び振り上げられます。得物が再び振り下ろされました。先程と同じく、私の胸部に深々と刃が突き刺さります。衝撃はありませんでした。それ自体に対する痛みも。代わりに、絶え間なく続いていた全身からの痛みが、さらなる波となって押し寄せます。そして、今度こそ私ははっきりと“それ”の瞬間を目撃したのでした。  私の手の甲、無数に刻まれた傷の合間、そこに“新たな傷が刻まれるのを”。  リーダー格の得物は、私の胸部を貫いたはずです。もちろんその際に、手の甲に擦るなどということが、あるはずもなく。疑問は自然と一つの結論へと落ち着きます。  “受けた傷が転移している”。  が、その時の私はそんなことすら分かっていませんでした。最初に理解したのは――傷を付けた張本人――リーダー格の男です。
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