始まれば怒涛の勢い

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困った。どうやら確実に私は世間知らずと見なされたらしい。原田さんが私に図解つきで説明してくるのが証拠だ。ムカつく。 そんな私の心中は知らず、原田さんはいいか?と子供に言い聞かせるように続ける。 「つー事だ。分かったか?」 「お父さんが局長で、トシが副長で、山南さんが参謀。で、他の方々が幹部でしょ?で、ここは新選組ってゆー集まりの場所」 「よーしよし、よくできました」 わしゃわしゃと頭を撫でてきた。噛みついてやった。 「ぎゃーっ!!!?」 「うえぇ!?ちょっ左之さんの手噛まないの!餌じゃないよ!」 「ほいひふにゃい(おいしくない)」 「そりゃそうだろうな」 「ぱっつぁん言葉分かったの!?」 原田さん藤堂さん永倉さん達は遊んでもらうとすごく楽しい。けど、よくよく思い出せば会議中。トシに原田さんから引き離され、斉藤さんの所に戻ってきた。 「斉藤、会議中はそいつの面倒頼む」 「喜ん………、承知」 今喜んでって言いかけた。斉藤さん可愛いなぁー。 「土方さん。この子が何も覚えてないのは明白みたいですよ?」 「確かに…な、仕方ねえ、おい猫。お前は今日からうちで預かる。拒否権はねえ」 「トシ、嫌い。お父さん、総司さん達、好きです」 「捨ててやろうか?ああ゛!?」 「副長…、名前をつけましょう」 「斉藤……、…分かった」 斉藤さんの目力により、あっさり頷いた。 後から聞いた話だけれど、斉藤さんが人間を気に入るのは珍しいらしく、私は貴重だそうな。やったね。 「あ、なら僕ありますよー」 名前決めの話が出て、皆さん考えてくれてます。そこで総司さん真っ先に挙手。しかしお父さんが慌てて一言。 「総司!名字は近藤だぞ!!」 分かってますよ、と言った上で、命名。 近藤樹雨(キサメ)。ここにいるお父さん達仲間を大樹として、その樹一本一本の枝に慈雨の雨を、だとか。 私そんな大それたものじゃないよ!? というか案外ロマンチスト?
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