第一章《始まり》

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『構わん。捕らえろ。』  その無線を通して聞こえてきたのは、聞き慣れた声。しかし、今はとてつもなく、冷徹に感じた。 『お父様…?』  少女は、小さな声を零す。 『いいのですか!?』  警備員らしい男性は、とても困惑した様子で、声にまで動揺が含まれている。 『構わんと言っているだろう!私もすぐにそちらに行く。後々、処理も必要だろうからな。』  お父様…つまりは国王が荒々しく言い放つ声が無線から流れる。 『あ、はいっ!!』  国王の気迫に押されるように、警備員達は返事を返した。そして、ダークスーツの腕が少女へと伸びた。  少女は、冷静にその腕をするりとかわし、先ほどから手を掛けていた扉を開き、その中に飛び込んだ。  広い部屋ではないのだが、あの黒い塊があれば、隠れられる。無くても、扉一枚分盾に出来る。  全ての策はほんの少しの時間稼ぎだ。それも幼い少女の考える子供だまし。  それでも、このまま何もしないでいれば、捕まるだけだ。とりあえず動かなくては、そう思って動いた結果だった。  少女は、部屋に踏み込むと同時に扉を閉め、自分の身体を扉に預けた。肩で息をしながら、部屋を見回す。  
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