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『構わん。捕らえろ。』
その無線を通して聞こえてきたのは、聞き慣れた声。しかし、今はとてつもなく、冷徹に感じた。
『お父様…?』
少女は、小さな声を零す。
『いいのですか!?』
警備員らしい男性は、とても困惑した様子で、声にまで動揺が含まれている。
『構わんと言っているだろう!私もすぐにそちらに行く。後々、処理も必要だろうからな。』
お父様…つまりは国王が荒々しく言い放つ声が無線から流れる。
『あ、はいっ!!』
国王の気迫に押されるように、警備員達は返事を返した。そして、ダークスーツの腕が少女へと伸びた。
少女は、冷静にその腕をするりとかわし、先ほどから手を掛けていた扉を開き、その中に飛び込んだ。
広い部屋ではないのだが、あの黒い塊があれば、隠れられる。無くても、扉一枚分盾に出来る。
全ての策はほんの少しの時間稼ぎだ。それも幼い少女の考える子供だまし。
それでも、このまま何もしないでいれば、捕まるだけだ。とりあえず動かなくては、そう思って動いた結果だった。
少女は、部屋に踏み込むと同時に扉を閉め、自分の身体を扉に預けた。肩で息をしながら、部屋を見回す。
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