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少女は、今ある現実を再確認する。背を掛けているこの扉の向こうには、警備員二人が自分を捕まえようとしているのだ。
そんな状況を理解しているのかしていないのか、少年は少女に手を伸ばした。
握手をするように。少女の手を掴もうとしているかのように。
少女は、その行為に戸惑う。自分も手を伸ばせば、すぐに彼へと手が届く。
しかし、手を伸ばすには、この扉に掛けている力を抜かなくてはならない。
でも、彼の手を取ってあげたかった。もしかしたら、こんな暗い所で今まで過ごしてきたのかもしれない。
そんな思考をめぐらした一瞬の後、少女は前へと押し出された。
『うっ!?』
扉が開いてしまったのだ。警備員が銃口を向けて、入って来た。
少女は、背中を預けていた扉の方に素早く振り返る。そして、自分の身体に向けられた銃口を見て、戦慄した。
『悪いな。国王様の命令だ。』
警備員の一人が口を開いた。さっきの戸惑った様子は微塵も感じられない。
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