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少女は、感じた。絶大なる力を。この光の中には誰も近づくことは出来ない!少女は、少年へ手を伸ばした。
少年の指先を捕らえ、互いに白く細い指が絡まり合うーーーことはなかった。
『人間には近付くことの出来ない力か…。面白いじゃないか。しかし、所詮この程度。逃げ切れるとでも思ったか、我が娘よ。』
『お父様…?』
少女の伸ばした細い指は、国王の手のひらに収まっていた。国王が少女と少年を隔てるように立ちはだかる。
『浅はかな考えだ。誰からこの場所を聞いたのかは知らぬが、ここに踏み込んだ以上、計画を始めるのもやむを得まい。』
国王は振り払おうともがく少女の手を掴んだまま、平淡に告げる。何の感情もこもっていない声だ。
その言葉に少年は、悲しそうな顔つきになる。
『散れぃっ!!』
国王が地の底から轟くような声で言い放った。少年と少女を包んでいた紅い光が王の命令に従うように、儚い花びらのように散っていく。
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