第一章《始まり》

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   警備員の撃った銃弾は、少女の左足を掠めた。殺さずに確保したいため、足を狙うことがベストだと考えたからだろう。  少年は、少女に放たれた銃弾にビクッと身体を硬直させ、その先の光景を見まいと顔を伏せる。  少女は、目の前に広がっていく赤い液体が自分のものだとは思えず、ただ呆然と見つめていたが、後から襲ってきた鈍い痛みに顔を歪めた。  そんな少女のもとに警備員達は近付き、一人は少女の右腕、一人は左腕と少女の両側から抑えつける。  小さな少女に警備員二人掛かりとは、なんともつり合いのとれない光景だ。  その様子を確認した国王は、少年へと歩み寄り、未だ儚い輝きを放つ少年の左目を塞ごうとする。  少年は国王の手を拒むように顔を背けている。国王は、少年の耳元で静かに何かを呟いた。その途端、少年の表情は一変する。  うなだれたまま、国王の手を受け入れ、左目の光は国王の掌中に消えた。  
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