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少年は、なるがままに身を任せることにしたようだ。国王の行為に何の抵抗もしない。
『ふんっ!』
国王は、気合いを一声放ち、少年の左目を塞ぐ手に圧力をかけた。一瞬、紅い光が二人の間に膨らみ、直後散った。
少年が国王の手から解放され、弱々しく開いた左目は冷たい漆黒だった。
『彼に何をしたんだ!』
少女は思わず声を荒らげる。自分の自由を奪われたことより、無邪気に手を差し伸べてきた少年のうなだれた姿を見ることが辛かった。
『この小賢しい力を一時的に封印しただけだ。こんなモノを心配している暇があるとは、余裕だな。次はお前だ。』
そう言いながら、ゆっくりとこちらへ近づいて来る。自分の両側からの拘束が一層強まったのを感じた。
(私に力があれば!)
少女は、強く願った。この状況を打開出来る力を。その願いは、少女の左目をより紅く輝かせた。
何かが起こると、ほとんどの者が思った。そんな状況下、左目の輝きを意にも介さず国王は静かに手を伸ばす。
『お前程度にその力は扱えん。』
『この目は一体何なんだ?』
この場にいる中でただ一人全てを理解しているような国王に、少女は問いかけた。
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