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自分は何も知らない。この部屋に入った途端、左目が輝き出しただけだ。
しかし、その問いに国王は答えを与えなかった。少女の左目を覆うように静かに手を伸ばす。
皇女という身分が故、多忙な両親に育てられたわけではないので、少女には家族意識などない。今目の前にいる父は、ただの敵でしかなかった。
少しだけ強まった左目の光は、国王の手によって、呆気なく覆われた。
国王の豪壮な緑や金の刺繍を施した礼服の袖から、三日月のチャームが揺れるブレスレットが見えたのを最後に左目の視界が遮断される。
国王は少年の時と同じように、手のひらに圧力をかけた。
少女は、思わず力んで目を瞑る。
が、想像した痛みはちっとも感じられなかった。痛みに代わって襲ってきたのは、凄まじい悪寒。
『っ!!』
何もかもが奪われるような、暗闇の中にいるような錯覚を起こす。少女は、もがくことも出来ずに固まっていた。
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