第一章《始まり》

17/44
前へ
/60ページ
次へ
   少女は感じた。暗闇の世界にいる孤独な自分を。何も見えない。この世界には自分しかいないのに、世界そのものが自分を拒絶しているように思える。  存在の拒絶。どうしようもない寂しさと悲しみを覚えてしまう。いつかどこかで感じたことのあるような深い悲しみ。    どうすることも出来なくて、何かの存在を求める。温もりを探して手を伸ばしてみた。当然、何にも触れられない。  だが、そこに紅い光を見いだした。二人の目から発せられた暖かい光ではない。それでも希望の光だと信じて、必死に手を伸ばす。  しかし、その希望は崩れ去った。紅い光は少女が近づくにつれ、どす黒い赤色へと変わる。  その光は、虫のような生物の眼だったようだ。黒い世界に染み込んで蠢いている。この生物は、一匹ではなかった。この世界にいたのは、自分一人ではないことを最悪な形で理解する。    黒と一体化した無数の生物が悲しみの濁流を具現化するように、少女へと襲いかかってきた。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加