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さすがに気持ちが悪い。少女がもがく手は、虚しく宙を掴んだ。逃げられない。そう思った瞬間、虫のような生物がなだれ込んだ。
『うわあぁぁぁ!!』
「『!!』」
◇◆◇◆◇◆◇◆
一六歳くらいの少女がベッドの上で目を覚ました。額に浮かぶ汗を拭い、ゆっくりと身体を起こした。
「ハァハァ…。………夢か。」
酷く息切れをしていた。一言呟き、部屋を見回す。いつもと変わらない部屋がそこには在った。
壁や床は全て、黒に近い灰色。部屋にある主なものは、少女が寝ていたベッドと隅に設(しつら)えられた四角い机だけだ。
細かいところを見ても、机の上にあるランプ、壁に掛けられた時計、その隣に掛かる一着の服くらいしか見当たらない。
見た目の年齢には、そぐわない暗くて殺風景な部屋だ。普通の部屋に見えなくもないその部屋には、ついつい違和感を覚える。
まず、窓がない。光が射し込まず真っ暗だ。そして、ドア。ドアらしき場所はあるのだが、そこには鉄格子がはめられていた。ドアノブのようなものは付いていない。
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