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国の民族衣装のように見える。
前髪は眉毛で揃え、後ろは腰までのび、艶のある漆黒をしていた。
着替えを終えた少女は、もう一度ベッドに戻り、腰をおろす。膝の上で手を組み、頭を下げた。黒髪が少女の表情を隠す。
ーー忘れられない過去の記憶。
それから自分の記憶は存在しない。よく見る夢ではあったのだが、その夢を見た朝はやはり落ち着かない。胸騒ぎすら覚えてしまう。
扉代わりについている鉄格子からは、誰かの足音が定期的に鳴り響く。おそらくこの部屋付近の見張りをする警備員の革靴の音だろう。
静寂の中には大きく聞こえるその音に少女は耳を傾けない。
しばらくして、革靴の音が扉の前で止まった。
鉄格子の下側は、長方形に仕切られ、そこだけ開けられるようになっている。そこから、ダークスーツの手が二本、トレイを手に出てきた。
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