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少女が恐る恐る女性を観察していると、女性は静かに顔を上げた。
『うわっ……!?』
女性の顔には疲労が色濃く表れ、生気の感じられない瞳が弱々しく輝いた。
少女は、目を見開いた。四~五年程度しか生きていない少女は、人間がここまで衰弱した姿など見たことが無い。猫のぬいぐるみを握る手に力が入る。思わず後ずさりをしてしまう。
そんな少女を見て、女性は口を開きかけた。少女は女性と触れ合うことに恐怖を感じ、急いで部屋を出て、扉を閉めた。
でも、少女の耳には届いていたのだ。聞こえなかったフリをしても脳裏に響く声は止められない。
乾ききったしゃがれ声だった。
『逃げて…』
身震いする。今まで押し隠してきた暗闇への恐怖が襲い掛かる。やはりここは異常だ。
少女が住むこの大きな建物は国において、城のようなものだった。といっても、昔の王宮という造りではなく現代的な建物。
少女はこの城から出たことが無かった。外出の許可をもらったことが無く、外の世界を知らない。
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